温調機器で吐出精度を改善!ディスペンサーにおける温調の役割とは

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この記事では、温調機器が液剤の吐出に与える効果、加熱式・ペルチェ式温調の特長や選定ポイントについて解説しています。
目次

温調機器で吐出精度を改善!ディスペンサーにおける温調の役割とは

液剤の温度を調整する機器は、加温システム、温調装置、恒温温調システム、加熱温調システムなど、さまざまな表現をされますが、当社では「温調ブロック」「温調コントローラ」という製品がその役割を果たします。この温調機器がどのような役割を果たすかを解説していきます。

温調接続システム構成図

温調機器で何ができるのか

まず、当社の温調機器には大きく分けて「加熱式温調」と「ペルチェ式温調」があります。
「加熱式温調」は液剤の温度を上げる目的で使用します。一方、「ペルチェ式温調」は温度を上げることも下げることも両方できるため、液剤を狙った温度に維持する目的で使用します。

Tips

ペルチェ式の仕組み

ペルチェ素子は電流を流すと、一方の側が冷却され(熱の吸収)、もう一方の側が加熱される特性(ペルチェ効果)があります。この特性を活かして、シリンジの周囲を冷却したり加熱したりする温調の方式を、ペルチェ式温調と呼んでいます。特にシリンジを冷却する時は、反対側で発生する熱を効果的に放散する必要があるため、ファンやエアが用いられています。

加熱式温調の特長

加熱式温調を使用する主な目的は下記の2つです。

①液剤の粘度を下げ、吐出性を向上させる

②環境温度の低さによる吐出トラブルを解消する

➀液剤の粘度を下げ、吐出性を向上させる

粘度が高い液剤を吐出する場合、そのままでは吐出に時間がかかったり、狙い通りの量や形状で塗布ができなかったりすることがあります。加熱式温調は、液剤を適切に温めることで粘度を効果的に下げ、吐出しやすくすることができます。

糸引きの軽減にも効果がある

液剤の吐出時に発生しやすい「糸引き」も、多くの場合、粘度が関係しています。粘度が高すぎると、吐出を終える際に液剤が切れにくく、細い糸を引いてしまう現象が起こりやすくなります。加熱によって粘度を適切に調整することで、この糸引きを抑制し、後工程での不良発生リスクも減らせます。

②環境温度の低さによる吐出トラブルを解消する

「テスト環境では問題なく吐出できたのに、実際の製造現場ではなぜかうまくいかない…」このようなトラブルの背景には、環境温度が大きく影響しているケースが少なくありません。特に冬場や寒冷地など、現場の環境温度が低い場合、液剤の粘度は高くなります。
加熱式温調システムを導入することで、現場の環境温度に左右されることなく、液剤を一定の温度に保つことが可能になります。結果、季節や場所を問わず、安定した吐出性能を維持し、生産性の向上と品質の安定化につながります。

加熱式温調のデメリット

  • 熱に弱い液剤は、加熱することで悪影響がでる可能性がある
  • 冷却する機能がないため、環境温度よりも液剤の温度を下げることはできない

加熱式温調のメリット

  • シンプルな構造のため、メンテナンスが簡単で、故障リスクが低い
  • 比較的導入コストが安価

武蔵エンジニアリングの加熱式温調

ペルチェ式温調の特長

ペルチェ式温調システムの最大のメリットは、「温める」と「冷やす」の両方の機能を持ち合わせている点です。
ペルチェ式温調を使用する主な目的は下記の2つです。

①液剤の温度を一定に保つことで、吐出精度を向上させる

②液剤の温度を環境温度よりも低く管理し、液剤の状態変化を抑制する

①液剤の温度を一定に保つことで、吐出精度を向上させる

製造現場の室温は、季節や時間帯、空調設備の有無によって常に変化します。この室温の変化は、液剤自体の温度に影響を与え、粘度を変動させる原因となります。例えば、室温が上がれば粘度が下がり、吐出量が増加する可能性があります。逆に、室温が下がれば粘度が上がり、吐出量が減少することも考えられます。このような外部環境の変化に対して、ペルチェ式は加熱と冷却の一体型で精密な温度維持を可能にします。
また、外部環境からの影響に加えて、シリンジ内部での発熱(例:接着剤の化学反応熱など)に対しても効果があるのが、冷却機能をもつペルチェ式温調の大きな特長です。

②液剤の温度を環境温度よりも低く管理し、液剤の状態変化を抑制する

ペルチェ式温調のデメリット

  • 調整可能な温度範囲の上限が低い

ペルチェ式温調のメリット

  • 加熱と冷却の一体型による精密な温度維持

武蔵エンジニアリングのペルチェ式温調

ファン式は電源のみでご使用いただけますが、クリーンルーム内での使用など、ファンの発塵が気になる場合は、エア式のペルチェ温調ユニットをご検討ください。
TCU-05MINIは、ファン式・エア式どちらのブロックにも対応した、新型の温調コントローラです。

武蔵エンジニアリングのペルチェ式温調一体型エアパルス方式ディスペンサー

以下の温調一体型のディスペンサーは、温調コントローラを内蔵しているため、ディスペンサーの設定画面で温度管理が可能です。(温調ブロック・温調ケーブルは別売)

温調接続システム構成図(ペルチェ式温調一体型)

「液剤の粘度変化」による影響を最小限にしたい場合

容積計量型ディスペンサー MPPシリーズ

当社では、容積計量型ディスペンサー MPPシリーズをご提案しています。
MPPシリーズは、液剤の粘度変化に左右されにくい「定量性」が特長のディスペンサーです。
液剤の「粘度」が変わっても、吐き出す「かさ(容積)」が常に一定に保たれるため、安定して正確な量を出すことが可能です。
プランジャの移動量で吐出量を制御するため、液剤粘度に関わらず一定量の吐出を行います。

MPPシリーズの活用:温度による粘度変化以外の要因にも対応

吐出量がばらつく原因は、温度による粘度変化だけとは限りません。例えば、液剤のロット(製造番号)が変わるごとに、液剤粘度にわずかなばらつきが生じることがあります。

液剤ロット間のばらつき例

このような「液剤ロット間のばらつき」によって吐出量が増減するケースでも、液剤の容積を正確に計量するMPPシリーズは効果を発揮します。ロットごとの液剤粘度の違いに左右されず、常に設定された一定の容積を吐出するため、安定した吐出量を維持することが可能です。

MPPシリーズのデメリット

  • 一定のタイミングで、液剤の充填時間がかかる

MPPシリーズのメリット

  • 「液剤の粘度変化」「液剤ロット間の粘度ばらつき」の両方の影響を受けにくい
  • 幅広い粘度の液剤に対応可能
  • 高い吐出安定性

武蔵エンジニアリングの容積計量型ディスペンサー MPPシリーズ

製品選定のポイント

製品選定の際には、次のポイントを考慮することが重要です。これらを踏まえ、最適な製品を選ぶ必要があります。

  • 液剤の特性: 使用する液剤の粘度、温度変化による影響、加熱や冷却による液剤への影響などを考慮する。
  • 設置環境: 室温の変化、装置から発生する動作熱、設置場所のスペースなどを考慮する。
  • 生産ラインの要件: 求められる吐出精度や量の安定性、使用する容器の制約などを考慮する。
  • コスト面: 初期導入費用、運用にかかるランニングコスト、日々のメンテナンスの容易さや頻度などを考慮する。

これらの要素を総合的に判断し、用途や環境に最適な製品を選定することが重要です。

武蔵エンジニアリングのディスペンスソリューションで吐出課題を解決

液剤の吐出工程で「吐出量の不安定さ」「品質のばらつき」「メンテナンス負荷」といった課題は、生産効率や製品品質に直結する重要な問題です。

当社は液剤の粘度変化、環境温度の影響、液剤ロット間のばらつき、そして高度な吐出精度への要求まで、お客様の具体的な状況に応じた最適なソリューションをご提案します。
多彩な製品ラインナップでお客様の多様なニーズに柔軟に対応いたしますので、現在、液剤の吐出・塗布でお困りごとがありましたら、ぜひ一度当社にご相談ください。

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