3Dフードプリンターとは | 3Dプリンターによる食品造形を解説!

この記事では、3Dフードプリンターが注目される理由や技術的仕組み、食品ロスの削減にどのように貢献するのかを深く掘り下げます。さらに、実際に進められている先進事例もあわせて解説します。
3Dフードプリンターとは?
3Dプリンターの技術を応用して、食品を立体的に成形・製造する装置のことです。通常の3Dプリンターがプラスチックや金属などの素材を使用するのに対し、3Dフードプリンターは食品用の素材(チョコレート、ペースト状の食材、生地など)を使用します。これにより、デザインされた形状や構造を持つ食べ物を作ることが可能になります。
分かりやすい例として、次のソフトクリームの写真をご覧ください。

ソフトクリームが機械から出てくる(吐出)早さや量を一定にしたとしても、コーンの動かし方(モーション)が不安定では、ソフトクリームの形は崩れてしまいます。3Dフードプリンターでも同様です。
3Dフードプリンターでは、吐出の技術だけを持っていても、モーションの技術だけを持っていても、望んだ形状を安定して作ることはできません。
高品質な「立体造形」を行うには、吐出・モーションのどちらも、高い精度で「同時に」制御することが重要です。
3Dフードプリンターに注目が集まる理由
3Dフードプリンターが脚光を浴びる背景には、従来のフードシステムの課題や、効率的な食材利用への強いニーズがあります。
従来の大量生産・大量廃棄型の仕組みでは、規格外品の野菜や畜産物が多く発生し、それらの処理にかかるコストや廃棄ロスが大きな社会問題となってきました。特に農産物の生産では、形が不揃いだったり、硬い部位が切り捨てられたりするケースが多く、食べられる部位であっても廃棄されることが少なくありません。食材の輸送や保存においても無駄が生じやすく、これらの改善策が長年の課題となっています。
こうした状況の中で、新しい加工技術が求められています。ペースト化して成形する技術であれば、形や硬さに左右されずに素材を有効活用できるため、生産段階で生じる端材や従来捨てられてきた部分を再利用しやすくなります。そのほかにも代替肉や介護食など、消費者の多様化するニーズに対応するうえでも3Dフードプリンターの特徴は貴重な存在となりつつあります。
さらに海外でもレストランやホテルが3Dフードプリンターを導入し、季節ごとに余りやすい食材を使った限定メニューへの応用が進んでいます。形状を個性的にデザインしたデザートや、栄養価の高い植物性ペーストを利用したサステナブルフードなど、ビジネスとしての広がりも加速しています。こうした世界的な潮流からも、今後の市場拡大に十分な可能性があると考えられます。
- 介護食
- 代替肉
- オーダーメイド食
- フードロスの解消
【導入事例】フードロスへの挑戦
未利用資源の活用をテーマに、あいち産業科学技術総合センターとの共同研究を通じて行われた3Dフードプリンターの先進的な事例をご紹介します。
※資料提供:あいち産業科学技術総合センター 食品工業技術センター様
MP五協フード&ケミカル様
焼き芋の皮(サツマイモ)の有効利用
焼き芋の皮を活用した3D造形に取り組みました。通常、焼き芋の皮は「硬い」「苦い」といった理由で敬遠されることが多く、廃棄されてフードロスの一因となっています。そこで、焼き芋の皮を電子レンジで乾燥させ、粉砕機で粉末化。その粉末を材料に数%添加して3D造形を行いました。その結果、サツマイモの中身のみを使用した場合と遜色のない滑らかな仕上がりを実現しました。
進化する食品添加剤×3Dフードプリンター
粉末(パウダー)状の食材を3Dフードプリンターでどのように造形しているのか、その具体的なプロセスについて、もう少し詳しくご紹介します。例えば、人参パウダーに対して90%の水を加えた場合、材料の状態は液状になります。一方で、水の量が少なすぎるとパサパサでまとまりがなくなってしまいます。また、粉体の吸水性など、粉体の性質によっても結果が異なるため、3D造形に適した配分を見つけるのには、多くの試行錯誤が必要となります。
こうした材料自体が抱える問題を解決するために役立つのが添加剤です。水のように流動性が高い材料であっても、添加剤を加えることで粘性を持たせ、形を保つことが可能になります。さらに、3Dフードプリンターの技術を組み合わせることで、立体的な造形を実現することができます。
また、元々の素材に新たな価値や機能性(例えば、食感や風味など)を付加する可能性も秘めています。

MP五協フード&ケミカル株式会社が調製・提供(同社にて特許取得済)
このように、野菜のくずや廃棄予定の食材を3Dフードプリンターの材料として活用することで、新たな食品リサイクルの可能性が広がります。さらに、野菜以外にも未利用魚を活用したフードインクの開発がスタートしており、未利用資源の活用による持続可能な食品製造への期待が高まっています。
【導入事例】介護食・代替肉と3Dフードプリンター ~フレンチと角煮~
3Dフードプリンターの需要は、介護食や代替肉の分野で高まっています。ニーズの背景と、当社ディスペンサーの具体的な導入事例についてご紹介します。
資料提供:東京医科歯科大学(現:東京科学大学)様、および嚥下フレンチを手掛けるシェフMP五協フード&ケミカル様
介護食の必要性
日本は高齢化社会で、全人口の約3割が65歳以上の高齢者です。その高齢者の6割が低栄養傾向にあり、低栄養は病気や回復の遅延などに影響を及ぼします。高齢になっても、必要な食事・栄養を摂取する事が重要といえます。
次の写真は介護食の一例です。東京医科歯科大学(現:東京科学大学)と嚥下フレンチも手掛けるシェフがコラボした際に作られた料理の写真で、生クリームで白鳥をイメージした2次元塗布と、球体の集合物による3次元創作ムース料理です。1台のフードプリンターで2次元から3次元までの造形ができるのは、他社にはない当社のディスペンス技術の応用により可能です。美しい見た目で、視覚と味覚の両方から食事を楽しむことができます。

代替肉の必要性
代替肉は、環境への影響を軽減する役割や、持続可能な食品供給を実現するのに役立ちます。日本の人口は減少傾向ですが、世界的には人口が増加しています。従来の肉(家畜)を作るよりも、材料や水が少なく済み、効率的な生産を行うことが可能です。また、世界人口の増加に伴い「タンパク質危機(プロテインクライシス)」の問題解決にも繋がるといわれています。
次の写真は角煮を再現した例になります。
通常は豚肉を使用しますが、カロリーコントロールやヴィーガン対応のために鶏肉をペースト状にした材料や、植物由来の大豆をベースに使用するなど、個人の体質・信条・嗜好に合わせた食材を選択することが可能です。脂身の部分については、今回は油脂を使用せず脂身様の食感を与える添加剤(ゲル化剤)を使用しましたが、ココナッツオイルなど自然由来の材料を活用することも考えられます。
また、角煮の付け合わせとして煮卵を添えてみました。特にご注目いただきたいのが黄身の形状です。遊び心を取り入れ、小さなお子さんの関心を引くために、クマの形にデザインしました。
3Dフードプリンターは、その技術を活用することでリアルな質感を追求するだけでなく、全く新しい食体験を作り出す可能性を秘めています。
角煮の味わいと見た目を再現しました。
3Dフードプリンターの仕組み
3Dフードプリンターを動かすためのデータ作成や手順についてご紹介いたします。
基本的な手順
造形方式によって手順は異なることがありますが、基本的に3Dプリンターを動かすためには、以下の手順が必要です。
- 3Dデータ(形式:STL)の準備
例えば、3Dスキャナーを使用して取得したデータを利用します。 - スライスソフトでG-codeデータを作成
3Dデータをスライスソフトに取り込み、G-codeに変換します。このG-codeが3Dプリンターが読み取るためのデータとなります。
当社フードプリンターの場合
ここからは当社のフードプリンターでの手順についてご説明します。当社ではMu-SLICERという、当社のオリジナルスライスソフトをご用意しており、3Dデータがあれば簡単に操作を行うことが可能です。
Mu-SLICERは、当社が独自に開発したスライスソフトで、当社がディスペンサー業界で培ってきた描画に関するノウハウを凝縮しており、液体材料をコントロールするための3Dフードプリンターに必要な機能が詰まったソフトウェアとなっています。
さらに、これから3D造形を始めたいという方には、「3Dビルダー」という無償のソフトウェアがあり、簡単な形状であれば、どなたでも手軽に3Dデータを作成できます。
当社は材料の出力や造形を行うディスペンス部分だけでなく、プログラムデータの作成や運用のフォローに至るまで、幅広くサポートいたします。
マルチパターン造形例:チョコレートオーナメント
当社では、ディスペンステクノロジーのコア技術を3Dフードプリンターに応用しています。この技術により、2Dの描画やオーナメント作りから、3D造形まで、多彩なパターンの造形を1台のプリンターで実現することが可能です。3Dフードプリンターとしての活用はもちろんのこと、生産能力が求められる用途においては、2D造形を組み合わせることで、さらに革新的な商品開発が期待できるのではないでしょうか。
導入の流れ・お問い合わせ先
武蔵エンジニアリングの3Dフードプリンター
3Dフードプリンター
- 3Dデータに基づいて多様な形状を作成。チョコレートからすり身まで対応。
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